【 九条春臣 】

「……何かその、恥ずかしいね、真面目な話しちゃって」
「うん、そうかも」
顔を見合わせて、お互い苦笑いする。
春臣くんとこんな風に話す日が来るなんて、想像も出来なかった。

「久しぶりだから、仕方ないよね」
「うん」

私にとって春臣くんはいつまでも小さいお兄さんだったから。
なんだか急に大人になってしまったみたいで、お互い様なんだけど、ほんの少しだけ寂しく思う。
背丈が同じくらいだった幼い私達は、本当に仲が良かった。
「ねえ沙耶ちゃん、僕達は友達だったよね」
「春臣くんは私のお兄さんみたいだったよ」
優しくて頼りになって、私はお母さんの次に春臣くんが好きだった。

「僕にとっても沙耶ちゃんは特別な女の子だったよ」
春臣くんもおっとりと微笑み、私を見つめる。
お互いに、今の姿を通して、過去の姿を見ているようだった。
「改めて……また、仲良くしてくれるかな、僕と」
春臣くんが私に手を差し出す。
「初めて会ったときも握手、したね。覚えてる?」

「握手したから僕達友達になったんだよ」
いたずらっぽく言って、春臣君が微笑む。

「今日も送らせてもらえる?」
「うん」
子どもの時とは違う春臣くんの手に少しだけ違和感を感じけど、
笑顔は間違いなく春臣くんのものだった。
「改めて……おかえり、沙耶ちゃん」

「君が帰ってきてくれて、嬉しいよ」

















inserted by FC2 system