STORY

——夏休み、旅先で少女が目覚めると病院だった。

唐突に告げられる母親の死。少女は誰の言葉も信じなかった。
「お母さんは、どこ?」

やがて少女は全てから逃げ出すようにしてひとり家に帰ってくる。
だがそこには誰もいない。
「私は、とうとう理解してしまった。
涙がぼたぼたと床に落ちて、てのひらをぎゅっと握り締めると、
手に爪が食い込んで、痛かった。痛い、痛い。ああ、これは現実なんだ」

母親のいない世界を受け入れることができない少女は、膝を抱えてただ母の帰りを待つ。
砂の城の上で暮らすような、不確かで孤独な日々。
海に沈む夢ばかり見ては、少女はだんだんと心を狂わせていく。
「お母さん、早く帰ってきて……」

ある夜、見知らぬ男が少女の目の前に現れる。

少女が病院を逃げ出してきたことを知っていた男は、少女を脅迫すると家に上がりこむ。
「君がここにいることを黙認してもいい。ただし、君は俺が監視する」

反発する少女だが、逃げることはできない。
「どこにも行けない。私はずっとここにいたいだけなんだから……」

夏休みが終わるまであと10日。
少女と男の奇妙な共同生活が始まる。

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